「やる気」を高める方法はいろいろあります。「自分の『やる気』をもっと高めたい!」、「子どもの『やる気』を大切に育てたい!」…そのためにもっといい方法はないか?

私自身の経験ですが、「やる気」を高める方法を学んでいくうちに、だんだんと方法にとらわれてしまって、大切なものを見失っていたことに気がつきませんでした。今回は、そんな苦い経験から学んだことをみなさまにシェアさせていただきたいと思います。

「やる気」の盲点となるではないかという内容をぜひご覧いただければと思います。




<「『やる気』の正体」シリーズの他の記事へのリンク>
「やる気」の正体①
「やる気」の正体②



やりすぎはダメ!腹八分目がちょうどいい!!

私の記憶では、20代後半から30代にかけての頃だったと思います。その頃はだんだんと県外のチームの方々と知り合い、練習試合に出かけることが増えていきました。県外のチームと交流させていただくと、学びや気づきがたくさんありましたし、自分たちの不足がはっきりとわかりました。強いチームと試合をさせていただくと、始めはなかなか対応できないのですが、だんだんと慣れてきてできる始めることがありました。

それを発見してから、もっと強いチームと試合をする機会を増やしたらいいのではないかと考え、どんどん試合を組んだ時期がありました。通常時はなかなかそれは難しいので、夏休みにまとめて連続で試合を組んだり、毎週毎週試合を組んだりしていました。

当然、だんだん疲労がたまってきます。疲れた中でも、「やる気」がギラギラしているのがいい選手だと本気で考えていました。しかし、子どもたちは体は疲労しているのはもちろん、心がすごく疲労しているのを感じました。今考えると何ということをしてしまっていたのかという情けない気持ちになりますし、当時の子どもたちにすごく申し訳ない気持ちでいっぱいです。

私の不勉強で大変な迷惑をかけてしまいました。当時の私は、自分が中学生や高校生のときは本当にたくさん試合をしたから、それが当たり前だと考えていました。自分の経験してきたことが正しいと考え、それをそのまま指導するなんて、学んでいない人間そのものですよね?本当に情けなかったと大変反省した上で、私にできることはよくない経験をみなさまにシェアさせていただき、少しでも子どもたちのために役立つことだと考えました。

なぜ、やりすぎはいけなかったのか?

以下、私が学んだことをお伝えしていきます。


先輩からの学び〜「コップ」理論

あるとき、先輩の指導者の方から以下のような話をお聞きしました。

「子どもたちの『コップ』がいっぱいになると、もうそれ以上は入らないよ!だって、水があふれてしまうでしょ?」

みたいな話を伝えていただきました。つまり、人間は満たされていると、もうそれ以上「やりたい!」とは思わないという意味だと私は整理していました。その方は、コップがいっぱいになったときは、休ませたり、違うスポーツをして目先を変えたりすると言っておられたように記憶しています。

また、その方は、

「子どもたちの『コップ』が下を向いているときにこちらがどれだけ注いでも入らないから、まずは『コップ』を上に向かせないといけないよ!」

という話もしてくださいました。

「なるほど!」とよい刺激を受けました。このとき、私は「コップ」を心や気持ちのようなものだと漠然と捉えていました。

ここから、子どもたちの様子を見極めながら、試合を組んだり、相手を考えたりするように少しずつ変わっていったように思います。試合で考えると、負け続けたら当然つまらないですし、勝ち続けてもだんだんつまらなくなります。頻度で考えると、やりすぎると疲弊してしまいますし、やらなさすぎると刺激がなくなってしまいます。

子どもたちの様子を見極めながら、どのようにスケジュールを組んでいくか?その「さじ加減」は現在でも難しいと感じるくらいですが、そこが指導者として、子どもたちのサポーターとして、おもしろいところでもあります。子どもたちと一緒に活動する中で、学びながら行っています。

脳のメカニズムから「やる気」にとって、最も大切なこと

脳科学の視点から、

「やる気」にとって、最も大切なことは、「健康」であること、です!!

これを聞いて、みなさまはどう感じられたでしょうか?私は「えっ!?そんなことなの?」と思考が止まってしまいました。しかし、これを理解できているかどうかが非常に重要なのです!!

脳の最も重要な機能は、「死なないように各所をコントロールしていくこと」=「いつもの状態を保とうとすること」です。これについては、これまでのブログの記事の中にも何度も出てきた内容です。

体が疲れていたり、病気だったりすると、「いつもの正常な状態」に戻そうといろいろな部分をコントロールすることに力を使います。脳の立場から考えると、「やる気」を出そうとしたり、「楽しもう」としたりしている場合ではなく、一刻もはやく体を元の状態に戻したいのです。だから、脳の能力の多くをそれに使います。

自分が熱が出たり風邪をひいたりして寝込んだときのことを思い出してみると、そのときに「ワクワク」することは全くありませんでした。脳が好奇心を刺激されて「ワクワク」している場合ではなく、一刻もはやく熱を下げたり、風邪を治したりしないといけないからです。

心についても同じです。

心がひどく疲れていたり、大きな悩みがあったり、すごくモヤモヤしているときに、「やる気」はあまり出てきません。なぜならば、脳が元の状態に戻すことにかかりっきりだからです。こんな状態のときに、試合をどんどん組んで鍛えようとしても、非常に厳しいですよね?

そして、心と体は密接につながっています。体がとても元気でも、心が元気でなかったら、体の絶好調をほとんど生かすことはできません。逆も同じで、心(気合)で体を無理やりにでも動かすこともできる部分はあります。しかし、限界があると思われます。

つまり、「やる気」の根本は、体の「健康」心の「健康」によって成り立っているということです。

これを知っていると、子どもたちとの関わり方を変えることができます。「やる気」がないように見える子どもの姿があったときに、もしかしたら「やる気」がないのではなくて、心の「健康」が確保できていないかもしれません。体が疲れているのかもしれません。実は、自分に「甘え」ているだけかもしれません。

いずれにせよ、この知識によって子どもたちを見極める目が変わり、声かけや関わり方を変えることができるのではないでしょうか?そういった積み重ねから、子どもたちとよりよいコミュニケーションを育みながら、最終的には、子どもたち自身が、自分で自分の状態がわかるように(説明できるように)、自分で自分の「やる気」をコントロールできるようにしていくことが理想だと考えています。

かなり難しい課題ですが、理想(目標)を目指しながら、できることを1つずつ増やしていきたいですね。



「やる気」の正体③のまとめ

「やる気」の本当の土台は、「健康」な体と「健康」な心です。

ここ近年、大きな問題だと感じていることが、「スマホ問題」、「ゲーム問題」です。長時間スマホゲームをやり続ける子どもたち、夜遅くまでスマホをいじっている子どもたちが、私たちが思っている以上にたくさんいるのではないでしょうか?

「この子は集中がすぐに切れてしまうな〜」、「刺激をあまり感じないな〜」、「この子はやる気がうすいな〜」と他の子どもと比べて明らかに違いを感じる子どもたちの多くは、ゲームやスマホを長時間扱っているのではないかと心配しております。あくまでも子どもたちから話を聞いたことや日々の活動の中で感じることですので、私の主観であり、正しい情報ではないかもしれません。

しかし、「睡眠不足」、「遅刻」の繰り返し、「やる気」や「意欲」の低さなどを感じたら、やはり体の「健康」や心の「健康」に黄色信号がともっていると感じて、私たち指導者が注意をはたらかせる必要があるかもしれません。

私にも息子が2人おりまして、今のところはスマホも持たせていない、ゲームもほとんどできない環境をつくっていますので、「スマホ問題」や「ゲーム問題」が顔を出すことはありません。しかし、今後だんだんと緩和しながらも、自分でコントロールできる力をつけたり、自分でコントロールできる方法を身につけさせたりする必要性を強く感じています。現代の親のしつけは、スマホやゲーム、SNSなどのメディアとの付き合い方まで含まれているんだと強く感じています。

各小学校、中学校から、「ノーメディアデー」の取り組みや「生活習慣チェック」の取り組みなどがあるかと思います。そういった取り組みを通じて、メディアとの付き合い方を考えるきっかけをいただいたり、「早寝早起き」&「朝ごはん」といった「健康」の基礎となる習慣を見直す機会をいただいたりと、とてもありがたい機会をいただいているのですが、なかなかいかせていないのが現状です。

みなさまも、これを機に「やる気」の土台である「健康」を見直してみてはいかがでしょうか?子どもたちだけではなく、私たち大人にとっても「健康」と「やる気」という視点はとても大切だと感じております。

この記事が、誰かの役に立てますことを願っております。



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「やる気」の正体①
「やる気」の正体②