先日、ジュニアユースは県リーグ2部残留を決めました。また、ジュニアは、前期リーグに敗れた相手に引き分け(PK勝ち)をしました。ジュニアユースの子どもたちも、ジュニアの子どもたちも自分たちで手にした勝利に自信を深めたことと思います。
試合に勝つことによって、自信が高まるのは理解できます。しかし、負けてしまったら自信は得られないのでしょうか?もっと言うと、負けることはダメなのでしょうか?
子どもたちにはもちろん、勝つ喜びを感じてほしいです。しかし、試合には相手があり、相手も勝つために全力で向かってきますので、勝つこともあれば、負けることもあります。自分がコントロールできない勝ち負けの中で、試合に勝っても負けても次につながるものを手に入れることができないだろうかと指導者になってから、ずっと考えてきました。しかし、自分の中で迷いながらなかなか腑に落ちない状況でした。
そんな中、田中ウルヴェ京さんの「心の整えかた」という本に出会いました。
その本の中には、「自信」について書かれている項目があり、それを読むと今までふわっとしていた自分の考えがす〜っと整理されるのを感じました。
私の「自信」についての整理に役立った内容を、今回はみなさまとシェアさせていただきたいと思います。
なぜ、「自信」が揺らぐのか?
私は、選手の時はあまり自信が揺らぐようなことはなかったように記憶しています。
それがなぜかと今振り返ってみると、試合に出られないこと、メンバーに選んでもらえないこともあり、自信を失い、後ろ向きな気持ちになることもたくさんありましたが、不思議と「自信喪失」まではいきませんでした。得意なこと(できること)と苦手なこと(できないこと)を整理しながら、できることを増やしていこうと日々取り組んでいたからかもしれません。これができたのも、サッカーが心から好きだった体と思います。サッカーの魅力に気づかせてくださった、またサッカーが好きだと気持ちを育ててくださった指導者のみなさまに感謝しかありません。
しかし、指導者になって何年かたったときに、自分の自信がどんどん揺らいでいくのを感じました。自分の指導がうまくいっているのか?うまくいっていないのか?ばかり気になっていました。そして、私の指導者の方々と自分を比べてしまい、自分の劣っているところばかりに目がいってしまっていました。自信が低いのはいけないことだと思っていたので、自分で無理に自信を高めるかのように、気持ちを強く持とうとしていました。本当に情けない限りでした(汗)。
田中さんの本の中のことばをお借りすると、「相対評価」で自分の価値をはかることによって、他人と比べて「自分の能力を疑い自信不足になる」という状況に陥っていたのです。そして、「実は自信がないからこそ、表面的に自信があるとみせかけている」状態だったのです。
最悪のサイクル…うまくいくはずはありません。
今思えば、自分の恥を平気で話せますが、当時は本当に苦しみました。私のように苦しんでいる人がいれば、できるだけお役に立ちたいと思っています。
「自信」とは
ここで、「自信」について改めて定義して、整理しておきたいと思います。
「自信」とは、「自分の能力や価値を信じること」だそうです。
そして、スポーツ心理学によると「自信」には、
①「結果予期」:「良い結果が出て自信になった」というもの。人から称賛されたり、メダルが取れたりと、目に見える確かなものによって保証される種類の自信
と呼ばれる自信と、
②「効力予期」:人から見えていなくても、自分が今日できたこと、継続していることを通じて「自分には実力をつけるまでの積み重ねを続ける能力があり、価値がある人間だと信じていること」
と呼ばれる自信の2つの自信があるそうです。
そして、間違った自信として「自信不足」と「自信過剰」があるそうです。上記でも挙げた通り、「相対評価」で自分をはかっていると、他人と比べて、自分の能力を疑い「自信不足」になる場合もあれば、自分の能力を勘違いして「自信過剰」になる場合もあるのです。どちらも望ましい状態ではありません。
間違った自信① 「自信不足」
「自信不足」のときの具体的な状態として、
①自分には他人の期待に応えられるだけの価値がないと感じている
②自分の技術、体力といった能力が足りていないと感じている
③自分の能力にも価値にも疑いがあると感じている
という3つの状態が多いそうです。
この「自信不足」の状態のときは、自分が負けそうなときにはどんどん自信がなくなっていきます。
間違った自信②「自信過剰」
「自信過剰」のときの状態としては、
① 本人が本当の実力以上に自分のことをすごいと思っているとき
② 実は自信がないからこそ、表面的に自信があると見せかけているとき
の大きくいって2つの状態があるそうです。
①の状態では、自分のおかれる環境のレベルが上がったり、ステージが上がったりしたときに、「実はそれほど自分には力がない」とわかり、持っていた自信がすぐに喪失してしまいます。
②の状態では、うまくいかないことを、審判のせいにしたり、周りのせいにしたりと「言い訳」をして、自分の実力不足や失敗を認められません。また、「自分はポジティブなんで!」とか、「私はメンタルが強いんで!」と言って強がり、現実の自分の弱さを直視しないので、変わることがなかなかできないようです。この心理の裏には、「失敗に対する恐怖心」があるそうです。
「効力予期の自信」に注目する!
「自信不足」も「自信過剰」も、他人と比べたり、勝ち負け(成功失敗)に自信を委ねたりすることがそもそもの原因だそうです。
これら自信ではなく、
試合で勝っても負けても、行動に成功しても失敗しても崩れない自信に注目していく必要があります。
それが、自信の定義で整理しました「効力予期の自信」だそうです!!
「効力予期の自信」とは、「自分の能力や価値を信じること」、つまりは、「人から見えていなくても、自分が今日できたこと、継続していることを通じて「自分には実力をつけるまでの積み重ねを続ける能力があり、価値がある人間だと信じていること」です。
「効力予期の自信」を培うために最も重要なことは、
まず「自分は○○ができた」という事実をきちんと言語化して、認識できるようになること
だそうです。
「効力予期の自信」の育て方①
繰り返しになりますが、
「効力予期の自信」を培うために最も重要なことは、
「自分は○○ができた」という事実をきちんと言語化して、認識できるようになること
です。
例えば、
サッカーの練習中に、「自分が走らなくても誰かがやってくれるだろう…」と思うこともあるでしょう。そのときに、さぼってしまおうか、それとも自分がやろうか…と葛藤した結果、いつもよりも少し走って役割を果たしたとします。
練習が終わった後、みなさんだったら、
(1)「さぼってしまおうと思った自分は本当にダメな人間だ」と記憶(記録)しますか?
(2)「途中、自分に負けそうになったけど、最後は自分で走ることを選ぶことができた」と記憶(記録)しますか?
どちらを記憶するでしょうか?
(1)は単なる自分の捉え方、自己評価に過ぎません。(2)は事実です。この(2)のような事実をいかにしっかりと言語化して認識していく作業を積み重ねていくかが、「効力予期の自信」を育てていくのに大切なことだそうです。
「効力予期の自信」の育て方②
もう1つは、
できなかったことができるようになること、それを継続できたという経験を積むこと
です。
例えば、
腕立て伏せが5回しか続けられなかったけど、1ヶ月続けたら10回できるようになった、というような経験を積むことです。
このように、「今日自分ができた事実を常に意識すること」、そしてそれを「継続してやり続けること」によって、「自分はやり遂げた」という自信、つまりは「効力予期の自信」を育てることできます。
この「効力予期の自信」は、結果を出すまでの過程で培われていく自信であると同時に、結果が出なかった後も、次に進むために「使える」ものだそうです。「負けから学ぶ」、「失敗から学ぶ」というのが、まさにこれだと思います。
この「負けから学ぶ」、「失敗から学ぶ」ということは、中学校のときに顧問の先生から何度も伝えていただいたことです。「負けて」くやしい思いをして、勝つために必要なことを意識して練習して、できることを1つずつ増やして、再度戦う…負ければ再度繰り返す…それを繰り返していると、段々と差が縮まって相手に勝てるときが来るという経験をさせていただきました。この経験が大きかったと改めて感じています。
「自信」について考えるのまとめ
まとめとして、田中ウルヴェ京さんの「心の整えかた」の「2種類の自信を理解する」という章に書かれている1節を引用させていただきたいと思います。
「勝ち負けは自分ではコントロールができません。相手が自分より強ければ、相手が自分より速ければ、どんなに頑張っても負けてしまいます。結果予期のことだけを考えていたら、もちろん、負けても自信にはつながりません。でも負けるという結果ができるまで努力を続けた、その経験で得たものがあったはずです。それにしっかりと意識を向けることができれば、経験が自信となり、次につながっていきます。」
この1節が、私がこれまでたくさんの方と出会い、いろいろな学びと出会わせていただき、自分の中に取り込んだことをわかりやすく言語化してくださって、私の中にす〜っと落ちました。
今、私は決して自信があるわけではないですが、負けや失敗に対して、しっかりと「受け止める」ことができるようになりました。それは、この引用の中にもあるように、負けや失敗から学び、それが次につながることを身を以て理解しているし、実践し続けているからです。
様々な場面で関わる子どもたちにも、この2つの自信をバランスよく、育めるような環境をつくり、一緒に自信を高めていきたいと考えております。特に、様々な活動を通じて、「効力予期の自信」の芽を芽生えさせ、少しずつ大きくしていくきっかけづくりやお手伝いをしていきたいです。
それには、やはりまずは私が様々なことから学び、成長していくことが必要だと考えております。私が成長すれば、より子どもたちの成長にもつながるからです。
この記事が、誰かのお役に立てますことを願っております。