少し前になりますが、2022年12月4日(日)の「情熱大陸」で、仙台育英野球部監督の須江航さんの特集がありました。

須江さんの1つ1つのことばから、たくさんの学びがあり、私自身の日々の活動に活かせることがたくさんありました。それを記録に残しておきたいという気持ちと、これからの子どもたちとの関わりについて一緒に考えてくださるなかまが1人でも増えたらいいな〜という思いで、記事にさせていただきたいと思います。

今回は、「情熱大陸」の中で、2つの切り口についてみなさまとシェアさせていただきたいと思います。



「成功」じゃあ、人は成長しない!?

番組の中で、須江さんから次のような話がありました。

「やっぱり、成功じゃあ、人は成長しない」

「成功して得られるのは、10のうち2くらいで、あとの8くらいは失うことでしょうね」


これを聞いて、私は「え!?全国優勝しても成長しないし、得られることはほとんどないのか?」と唖然としてしまいました。ここでいう「成功」とは、仙台育英高校の夏の甲子園全国優勝です。私は全国優勝した経験はありませんので、その真意はわかりません。

想像の域で考えるとすれば、「全国優勝」というとてつもなく高い目標をいざ達成してしまうと、次の目標がなくなってしまうのではないかと思います。次の目標がなくなることで、日々の取り組みが今まで通りになってしまい、どんどん進まなくなっていく…現状維持は退化の始まりですので、どんどんよりよく変わるきっかけを失っていき、なかなか成長のチャンスをつかめずに時間が過ぎていってしまう…それが、「あとの8くらいは失う」ということばの意味なのかなと推測します。

つまりは、高い目標を目指して取り組んでいくことは、自分たちの成長にとって、非常に重要な要因である…途中の過程こそが成長にとって最も重要であるということなのかもしれません。

自分の人生を振り返ってみると、小さな成功はたくさんありましたが、「全国優勝」というような大きな成功は1つもありませんでした。高校2年生のときに夏のインターハイ、冬の選手権と2度県予選を優勝して全国大会に出場しました。しかし、この経験は私にとってはくやしい経験でした。試合には全く出場できませんでしたし、チームとしても到底全国で戦えるレベルにない…くやしさが強く残りました。だから、この経験が自分の中では「成功」ではなく、「失敗」として残り、今までサッカーを続けてこられた原動力になっていたのだと改めて感じています。

私がサッカーの指導者となってからも、小さな成功はいくつか経験しましたが、失敗の方が大きく、そして多く経験してきました。その度にくやしい思いや情けない思いを感じながらも、次に何とか進めようとしてきました。そうした経験の積み重ねが、今の私を支えてくれていて、約20年間指導者として活動し続けることのできた原動力になってくれていたのだと改めて感じています。

そういった意味で、須江さんが言われた「やっぱり成功じゃあ、人は成長しない」ということに共感できますし、子どもたちにもいい形で還元できるようにしていきたいなと思います。



部活動をしている本当の目的

須江さんは番組の中で、仙台育英高校野球部の活動の本当の目的について、以下のように述べておられました。

「日本一をとることが(本当の目的)ではなくて、自分が親になったり、社会的責任がある年齢になったときに、自分がどういうことを考え、振る舞い、行動すれば、幸せだと思える時間がやってくるのかというもののベースにしたいんですよ」

「(思考が)帰ってくる場所を提供したいじゃないですか。思考の帰ってくる場所。困ったとき、苦しい時に…」

「それ(日本一)を目指さないと得られないんですよ。成果に対して向き合わなかったら、さっき言っていたことは絶対に得られないので。努力したからOKってなっちゃうから、成果と向き合わないと。取り組みが良かったからいいよねって、よくがんばったねって、自己完結されちゃうから、それじゃダメじゃないですか」


私たちも、サッカーを通じて、子どもたちがこれからの人生をより豊かに、より幸せに歩んで行くために、必要な力を身につけて成長していってほしいと強く願っています。仙台育英高校野球部のような野球の名門校でも、そういった部分を本当の目的として設定して活動しておられることにとても勇気づけられました。それと同時に、吸収して活かしていける部分をしっかりと学びとりたいと感じました。

この部分で、私の中で「目的」と「目標」について、とてもクリアになりました。目指すは「目的」であり、その「目的」を達成するために、途中にたくさんの「目標」設定があるということです。

仙台育英の場合は、能力や志の高い選手たちがたくさん集まってくるので、1つの目標設定が「全国制覇」となり、1つ1つの「目標」設定がかなり高い設定となり、高精度で達成していくことになるのです。しかし、私たちの目の前の子どもたちはまたちがう子どもたちになるので、子どもたちの状況によって、「目標」設定のハードルを落としていくことも必要になります。

そして、最も重要だと感じるのは、自分の取り組みと成果への向き合い方です。

自分の中で「がんばっている」と思っていても、周りのなかまはもっとやっているかもしれません。だからこそ、チームで(なかまと)という視点が必要なり、自分だけの基準で自己完結しないようにしていかなければなりません。

同じように、自分たちのチームでは「がんばっている」と思っていても、他のチームはもっと努力しています。それに気づき、自分たちのチーム内だけで自己完結しないように、対外試合を組んで相手の力を借りて成長していくという視点が必要になります。これについては、「子どもたちの成長のために大人ができること!?①」に記事内でも話題に挙げさせていただきました。

やはり、自分(たち)の取り組みと成果と真剣に向き合っていくには、自チームのなかまの存在、相手チームの存在が必要であり、それをすべて「なかま」だととらえていく視野の広さが必要だと改めて感じております。自分1人では成長することができないということに気づき、その視点に立つことが必要であり、周りの存在に対して「おかげさま」を感じることができるくらい、精神的に成長していかないと本当に意味での成長にたどり着けないのではないでしょうか?

相手を蹴落としたり、傷づけたり、足を引っ張ったりといったような戦い方、向き合い方では、本当の意味での成長はないと考えています。「ライバル」を敵、対抗者といったようにとらえるよりも、「好敵手」としてとらえた方がお互いにとって成長につながるのではないでしょうか?

自分たちのチーム(なかま)さえよければいいのではなく、周りのことも大切にできるような集団づくり、人づくりを改めて大切にしていきたいということに気づかせていただき、学ばせていただきました。


子どもたちの成長のために大人ができること!?②のまとめ

チームが何のために存在し、何を目指して活動していくのか?
私たち大人が子どもたちのためにできることは、何でしょうか?

改めて考えてみますと、非常に重く大変なことです。簡単に決められることではありません。チームの存在意義、目的を設定することによって、そこに所属する子どもたちの成長は大きく変わってしまいます。それと同時に、子どもたちの未来も大きく変えてしまいます。

そんな重みがあるからこそ、そんな重大なことだからこそ、私たち大人は、強い責任と強い思いをもって、環境をつくっていかなければならないのだと、須江さんのエピソードや特集から改めて学ばせていただいたように感じております。

サッカーに限らず、野球、バスケット、バレーボール、陸上…団体競技、個人競技に関わらず、すべての環境の基礎は、やはり人であり、指導者だと思います。私たち指導者も環境の一部分であり、常に自分を磨いていくこと、鍛えていくこと、学んでいくことによって、目の前の環境をよりよい環境に変えていくことができると思います。

私たちのクラブの20年を過ぎましたが、まだまだ変えていけることがありますし、やれることがあると考えております。これまでも、子どもたちとともに学び、変わってきましたが、今後もそれは変わらないと思います。

2025年にはタイヤのない車が出てくるのではないかと述べておられる方もおられます。それくらい社会の変化が目まぐるしいこの時代を生き抜いていくためには、環境のせいや周りのせいにするのではなく、私たちが柔軟に変わっていくことこそが必要ではないでしょうか?

自分(たち)を変化し続けていくためには、この記事でもお伝えしました通り、やはり、自チームのなかまの存在、相手チームの存在を大切にすることがポイントだと思います。そこから、いかに気づき、いかに学び、いかに行動を変えていくことができるかに尽きるのではないでしょうか?

子どもたちと一緒に、なかまと一緒に、学び続けながらお互いに関わるなかまが成長し続けることができるようにしていきたいです。そういった意味では、すでに私たちクラブの大切ななかまの存在があります。今後はそのなかまを少しずつ増やしていけるよう、取り組んでいきたいと思います。

この記事が誰かの役に立てますことを心より願っております。