プエデでは、幼稚園保育園の子どもたち、小学生1年生から6年生、中学生1年生から3年生まで指導する機会があります。
10年以上も前のことだったと思いますが、高校の指導者の方々から高校に進学してした高校1年生の子どもたちでヘディングができない子どもたちがとても多いという情報をいただくことがたくさんありました。そこから、プエデの子どもたちはどうなのか?と、高校でサッカーを続けていくに向けて、できていないことを確認をする目を持ちながら指導を行ってきました。
その中で、特に練習の経験が少なくてできないことを3つ見つけました。毎年実際に子どもたちに練習させてみたり、子どもたちに聞いてみたりしながら、ぜひ自チームでも確認していただき、一緒に子どもたちが長くサッカーを楽しくために生かしていただきたいという思いで情報をシェアさせていただきます。
「自チームでも足りないことはないか?」と、高校の指導者の方に情報をいただき、とても役立っています。
ただし、私の感覚でお伝えしていることですので、実際にはそうではないこともあるかもしれません。その場合はお許しください。
練習の経験が少ないこと① 「浮き球のコントロール」
浮いたボールや弾んだボールを止める技術には、「クッションコントロール」や「ウェッジコントロール」があります。
簡単に言うと、「クッションコントロール」は落ちてくるボールをクッションのように衝撃を吸収して、ピタッと止める技術です。足(つま先、インサイド、アウトサイド)、もも、胸、頭で「クッションコントロール」をします。
「ウェッジコントロール」は浮いたボールが地面に着いて上がってくるところを押さえて止める技術です。これは、主にインサイドやアウトサイト、足の裏で行います。
子どもたちと日々活動していると、こういった技術の中でできないことがある子どもがいます。また、こういった技術があることを知らない、やったことがないという子どもも時々見かけます。
近年、「3つの間」(=空間・時間・仲間)の不足によって、遊ぶ機会や運動機会の不足が多く見受けられます。中には、サッカーしかしたことがないという子どももいます。その影響で、ボールがどう弾むのか?、浮いたボールがどこに落ちるのか?ということが察知できない、察知するのが苦手な子どもたちが増えてきていると感じています。
この現象に関わるのが主に「空間認知能力」ですが、これは3歳から5歳に著しく成長すると言われています。しかし、遊びや運動経験の不足により、「空間認知能力」が伸びずに小学生を迎えている子ども、中学生になっている子どもが多くいます。
そういった点でも、サッカーの場で「浮き球のコントロール」の練習経験を増やして、「空間認知能力」に刺激を与えておくことは、子どもたちがよりサッカーを楽しむため、長くサッカーを楽しむために大切なことではないでしょうか?
練習の経験が少ないこと② 「ボレーシュート(キック)」
私はサッカーの技術にあまり自信はありませんが、この「ボレーシュート」には、結構自信があります。それはなぜかというと、小学生の頃に父親にボールを投げてもらって「ボレーシュート」の練習をしていたからです。そういった意味では、父に感謝をしています。
自分が身を以て経験したことから、「ボレーシュート」は練習すれば、おそらく多くの子どもたちができるようになることです。
しかし、取り組んでみるとわかりますが、できるようになるまでには時間がかかります。
まず、自分とボールとの距離がつかめず(自分の足がどこまで届くのかわからず)、空振りをしてしまうことが多いです。そして、ミートする足を高く上げることと身体を倒すことがなかなかできません。「ボレーシュート」は、自分のおへその高さ、できれば胸の高さでボールをとらえてキックしたいところです。しかし、子どもたちの様子をみていると、この難易度が高いようです。
軸足でしっかりとバランスをとれることに加えて、股関節や上半身の柔軟性、体幹の安定が必要となりますので、数をこなしながら、たくさんの練習経験を積まないとなかなかできるようにならないと感じています。クラブの活動では、スクールで時々行ったり、ジュニア(小学生チーム)で定期的に継続的に行っています。ジュニアユース(中学生チーム)でも、やり残している子どもたちのために、時々実施しながらできるようになれる環境づくりを行っています。
「ボレーシュート」に加えて、「バックキック」も重要な技術だと考えております。「バックキック」とは、浮いたボールを自分の頭を越えて背中の方向にキックする技術で、主にディフェンスの選手がクリアする際に使う技術になるかと思います。この「バックキック」は、「ボレーシュート」とほとんど構成要素は同じですので、どちらも行うようにしています。
子どもたちと練習していると、「ボレーシュート」がうまくできるようになると、ゴール前のシーンがより楽しめる様子です。「ボレーシュート」が決まるとうれしいですよね?できれば、小学生の間に経験させたいですよね?
練習の経験が少ないこと③ 「ジャンプヘッド(ヘディング)」
これには、賛否両論があると思います。ヘディングを行うことによって、子どもたちの頭に脳に強い衝撃が与えられるからです。しかし、日本サッカー協会(JFA)の見解では、禁止するのではなく、できる環境をつくる…ボールを軽いボールに変更して行うということです。詳しくはそちらにゆずりますが、小学生の間に可能な形で経験させておきたい技術です。
私の個人的な意見になりますが、このジャンプヘッドは技術を習得できれば、それに越したことはありません。しかし、遊ぶような感覚でやってみるだけでも、すごい効果があると感じています。そういった意味では、ジャンプキャッチでもよいのかもしれません。
いったいどんな効果があるのでしょうか?
まず、ジャンプして空中で動作を行うというのは、口でいう以上に、思っている以上に難しいことです。ジャンプヘッドは、ジャンプして空中で身体全体をうまくタイミングよく動かさないといけません。そのためには、体幹の安定、上半身と下半身がうまく連動することが必要になります。
また、上がったボールに対して、ボールの落下地点を予測しながら、ボールに合わせて動作を行うこと、つまりはかなり高い「空間認知能力」が必要となります。これは、繰り返し繰り返し行っていくうちにだんだんと刺激され、高まっていくと感じています。
「ジャンプヘッド」が小学生のうちに習得できると、かなりアドバンテージが得られると思います。仮にできなかったとしても、「ジャンプヘッド」の経験を積んでおくことで、思い通りに動かせる身体や動きがつくれますので、中学生以降の上達につながると思います。
ぜひ、みなさんのチームでもできる形に変えて、やってみてはいかがでしょうか?
小学生の頃に、練習の経験が少ないこと3選のまとめ
こうして、「浮き球のコントロール」、「ボレーシュート」、「ジャンプヘッド」について、お伝えしました。実は、私が指導者でまだ若い頃は、こういった技術の獲得を疎かにしてきました。キックやコントロール、ドリブルなどの方が試合に役立つと思い込んでいたからです。
しかし、サッカーでは中学、高校と進んでいくうちに、だんだんと浮き球を処理する機会が増えていきます。浮き球の機会が増えていくことに対して、練習経験をせずに急に技術を獲得しようとそのときになってから始めても、困るのは子どもたちです。
情けないことに、若い頃の私はそんなことに気づくことができず、自分のやりたい練習をやってきました。当時の子どもたちには心より申し訳なく感じております。そんな失敗から、やはり指導者は、子どもたちがサッカーを楽しめるように、サッカーを続けることができるように、という視点を忘れてはいけないということを学びました。
最近では、YouTubeやインスタグラム、TikTokなどで、サッカーの技術獲得の方法などの情報を誰でも簡単に得ることができるようになりました。しかし、多くはドリブルやコントロール、キックなどの「華やかな技術」が多いです。特に、ドリブルやボールを扱うことに関する情報は非常に多いと感じています。
しかし、浮き球をうまく処理する技術やヘディングで弾く技術は、試合の中で必要な技術です。トーナメントなど、勝負のかかった場面では、浮き球の処理ミスで勝負がついてしまうことも少なくないのではないでしょうか?
私たち指導者は、子どもたちのサッカーを支えるのが仕事です。今、目の前のことも大切です。
しかし、それと同じくらい大切なことは、その子どもが自分のもとを去ってからもその子のサッカーは続くということです。私自身、失敗してはそこから学び、そしてまた失敗し…を繰り返し、「どうすれば、子どもたちがよりサッカーを楽しむことができるのか?」、「どうすれば、子どもたちがよりサッカーを好きになり、続けることができるのか?」を子どもたちから学んできました。
今回のこのシェアは、私が一緒に活動してきた子どもたちから教えてもらったことです。ぜひ、みなさんで一緒になって、子どもたちのサッカーのために、学び、子どもたちの役に立てるように…、そして、それを私たち指導者自身も楽しんで、やりがいをもって、関わっていきませんか?
この記事が、誰かのために役に立てますことを願っております。