先日のスクール活動の中で、2人の子どもたちが一緒にボールを使って遊んでいました。とても楽しそうでした!それ自体は悪いことではなく、むしろ微笑ましい光景でした。
うちのスクールに参加してくれている子どもたちは、いろいろな学校から参加しています。ですので、敢えて、なかまどうしで触れ合える時間を少しだけをつくっています。時間にして5〜10分程度でしょうか?上級生たちには、「1人で寂しそうにしているなかまに気を配ってほしい!」と声をかけています。なかまとの触れ合いや全体の雰囲気を感じる、この時間で得るものが結構多いと感じています。
そんな時間を終えて、「さあ、活動しよう!」ということで、2人組になろうと声をかけて、活動を進めようとしました。しかし、ある2人がまだ遊んでいて周りの様子に気づいていませんでした。私は、そういうときは敢えて声をかけず様子を見守ります。その様子を見守りながら、活動のやり方を子どもたちに説明して、「さあ、やろう!」と進めました。
すると、何食わぬ様子で、その2人も活動を始めていました。しかし、プレーする方向がその2人だけ間違っていて、危険を伴う状況だったので、その2人に声をかけてこちらに呼び、話を聞いてみました。
そこでの指導で「失敗したな〜」と気づいたことがありましたので、今回はそれをみなさまとシェアさせていただきたいと思います。
若い頃の自分の伝え方からの気づき
2人がスムースに活動に切り替えて行動することができなかった原因は、遊びに、楽しさに気を取られすぎて、人の話を聞いていないこと、周りの様子に気を配っていないこと、です。
普段の遊びであればいいと思いますし、うちのスクールがそういった目的の場であれば、何の問題もありません。しかし、そうではありません。子どもは、サッカーを楽しみながらうまくなりたい、成長したいという思いで参加しています。また、保護者もサッカーを楽しみながら上達してほしい、人間としても成長してほしいという教育的な価値提供に期待をして、会費を払ってくださっています。
だから、私は、子どもが自分自身で「やる気」を高める方法やサッカーが上達する方法を伝えたり、それが身に付くような環境をつくって取り組みながら、活動を継続していく必要があります。簡単に行ってしまえば、それが私にとっての指導です。
しかし、若い頃は全くの未熟者でした。今回紹介しているような場面に出くわしたとき、私は頭ごなしに「人の話を聞かないのは、やる気がないのと同じ!!」とか、「素早く行動できないのは、いけないことだ!!」とか、かなりキツ目に、それも強引さ満載で伝えていました。
ルールをきっちりと守り、「きちんと」できるようになることが保護者から求められていると思い込んでいたからです。しかし、それは半分は正解で、半分は間違いであることに気づくことができました。
確かに、子どもに自由ばかり与えて、規律が全くなければ、何にも身につかないどころか、ただ子どもが好きなことだけ、やりたいことだけやっているに過ぎないような状況になってしまうかもしれません。しかし、だからといって、規律だけを強く前面に押し出すことによって、そこに自主性は失われてしまいます。
本当に子どもたちが身につけないといけないことは、「自分」を自分自身でコントロールできるようになることであり、「自分で気づき」、自分で行動を変えることができる力を高めることです。保護者のみなさまも、きっとそれを望んでおられることにやっと気づくことができました。
「自分で気づく」ことがすべての始まりであり、「本質」である
やはり、どんなにその子どもの行動が間違っていたとしても、「自分で気づく」という瞬間に出会わない限り、その後の行動は全く変わりません!!
「自分で気づく」というと、放っておくことだと勘違いしておられる方がおられます。実は、過去の自分もそうでした!!(汗)
しかし、そうではないのです。
「自分で気づく」というのは、人に言われて気づく、人の姿を見て気づくという場合もあります。また、その瞬間に気づくこともあれば、時間がたってからふと気づくこともあります。すぐに気づくことができれば、行動の変化は速いですが、私はどんな気づきでも、「自分で気づく」という体験を積み重ねることが大切だと考えています。
「人の話はしっかり聞かなければならない!!」というルールを子どもたちに入れてもよいと思います。しかし、それが「やらされている」段階から、「自分で気づいて」やる段階にレベルアップしない限り、いずれ人の話を聞かなくなります。よくあるのが、この人の話は聞くけど、あの人の話は聞かない…怖い人の話は聞くけど、そうでない人の話は聞かないという子どもの姿です。
最終的に、「人の話を聞いた方がいい!!」と子どもが自分で気づかない限り、その行動が身につくことはありません。身につけることが1つや2つなら、無理やりやらせながら習慣づければいいかもしれませんが、無数にあります。特に、大人になったら、何を身につけたらいいかなんて誰も教えてくれませんし、最後まで付き合ってもらえません。自分で気づき、自分で身につけなければなりません。
だから、プエデの活動では、「自分で気づく」体験、「自分で変わる」体験を子どもたちがたくさん積み重ね、経験から学ぶことができるような環境を提供したいと考えて継続しています。
すでに気づかれている方もおられると思いますが、これって大人も同じではないでしょうか?
私は、これを「自立型人材」の育成の基礎づくりだと考えるようになりました。そのきっかけは、音声アプリ「Voicy」の「トップ5%社員の習慣ラジオ」のパーソナリティー越川慎司さんのお話からいただきました。もし興味がある方はこちらから聞いてみてください。
先日の出来事で足りなかったこと
話が脱線してしまいましたので、戻します!
先日の活動のときに、2人が素早く切り替えて行動できなかった原因を「答え」を私は持っていましたが、子ども自身が「自分で気づく」ことが大切なので、次のように聞いてみました。
「2人はなぜ、素早く行動できなかったのだろう?他のなかまとちがう方向でプレーしてしまったのだろう?」
2人は下を向いて黙っていました。悪いことをしたと思っている、怒られていると思っているからだと思います。
しかし、私は全く怒っていません。こういうときは、わざといつもよりも少し明るいトーンで言おうと、取り組んでいる最中です。でも、子どもたちにとってはどう映っているのでしょうか?(私も、もっと自分で気づかないといけませんね)
自分がまずいことをしたときは、学校でも家でも怒られている、叱られているのでしょう…私も親として耳が痛い話です。当然、そういう場面も必要な場合もあるかもしれません。しかし、私がある子育てアドバイザーの方にお聞きしたのは、「子どもに怒っても意味がない」ということでした。怒られることによって、ブロックしてしまって、何も入らなくなります。
ずっと黙って下を向いているので、「今は目を見て話を聞くときじゃないの?」と伝えると、それがヒントになったのか、「遊びに夢中になっていて、話を聞いていなかった」ということばが2人から出てきました。
「じゃあ、自分からしっかり話を聞くことが大切だね!」と伝えて活動に戻しました。その後、2人の行動はいつもの通り、きびきびと行動する姿に変わりました。もともと2人とも自分から素早く行動して、率先して後始末をしてくれるような子どもたちです。
子どもも大人も同じかもしれませんが、人は時々ふとしたときに道からずれそうになってしまいます。今回もそういったものだと感じています。ずれていることに気づかせることができるかどうかが、指導者、大人にとってとても大切なことではないでしょうか?
しかし、ここで終わりではありませんでした。
自分が思っている以上に、記事が長くなってしまったので、続きは次回に持ち越したいと思います(ごめんなさい!!)。
子どもに「教えること」と「見守ること」①のまとめ
記事タイトルが「子どもたちに『教えること』と『見守ること』」というタイトルですが、「教えること」の方にかなり重心が偏ってしまいました。
子どもたちに「教えること」は、わかりやすく言うと、「考え方」です。「自分で気づく」と自分の行動を変えることができるし、それを積み重ねると自分を成長させることができる…だから、「自分で気づく」力を高めていくことが重要だという「考え方」を教えるのです。
教えるといっても、1回教えた、数回教えただけでは身につきません。何度も何度も自分の思考のクセになるくらいに繰り返す必要があります。
しかし!!です。
こちらが気づく度に、大人が気づいたことを伝え続けていては、子ども自身の「気づく」力は高まらないどころか、本当の意味で「自分で気づく」ことの大切さを実感する機会を奪ってしまいます。そこで、大切になってくるのが、子どもたちを「見守ること」です。
子どもたちの姿を、行動を、「見守りながら」、じっと我慢をして子どもたちに「失敗」する機会を奪わないことも大切だと思います。「子どもの行動の先回りをし過ぎていては子どもが成長できない」という話を聞いたことはありませんか?
今回2人に直接伝えたのは、「いいタイミング」だと感じたからです。普段は、集団の中で周りがやっているから無意識にできていた、もしくは何か「気づき」のアンテナが下がるような原因があったのだと思います。そこで、「今だ!!」と気づきのきっかけをつくりました。数日後の様子を見守りながら、私自身にも「気づく」力が求められます。
例えば、これを機に、よく話を聞いていて「なかまのために役立とう!」という行動をしてくれていたり、うまくなったりとよい行動があれば、それをしっかりと認めていくことがポイントになります。また、逆にこのきっかけを生かせず、望ましくない行動が続くようであれば、「○○さんは、よく話を聞いていていい行動ができたね!」というように間接的に気づきのきっかけをつくったり、場合によってはタイミングをしっかりはかって再度直接伝えたり、そんな細かな関わりが必要となります。
こういった積み重ねが「自立型人材」の基礎をつくっていくということではないかと考えております。
そのためには、私たち指導者が、私たち大人が、子どもたちと一緒に成長し続け、自分の気づく力を高めていくことが必要になります。いや、感度を高めていく、「解像度」を上げていくというイメージの方がしっくりくるかもしれません。
今回の記事が、誰かの役に立てますことを願っております。