みなさんは、「フェアプレー」についてどう考えておられますか?

日本オリンピック委員会のHPには、
「フェアプレーとは、『(1)運動競技で、正々堂々たるふるまい。(2)公明正大な行為・態度。(広辞苑第六版より)』です。スポーツにはルールがあり、そのルールを守ることでアスリートが互いに競い合い、高めあう。」
と記載されています。

日本サッカー協会のHPにも、
「リスペクト宣言」として、フェアプレーについてしっかりと記載されています。その中で、「フェアプレーとは、①ルールを正確に理解し、守る、②ルールの精神:安全・公平・喜び、③レフェリーに敬意を払う、④相手に敬意を払う、の4つであるとしておられます。

私の師匠は、「フェアプレーとは、最後まで全力でプレーすること」と常々おっしゃられています。

わたしなりに噛み砕くと、
まずは自分が最後まで全力でプレーすること、するとそれになかまが刺激を受けたり、動かされる…そして、相手も全力でぶつかってくる…全力同士のぶつかり合いを審判も全力で支え、ベンチも全力で支え、観客も全力で支える…最終的に、その試合に関わっているなかまがみんなお互いに全力を出し切ることによって、素晴らしい空間が生まれるのだと考えています。

「お互い」に、が大切なポイントですが、まずは自分たちからやることを大切にしたいと考えています。

しかしながら、なかなかこんな素晴らしい場に出会うことは滅多にありません。私のこれまでの経験でもこんな感覚を感じた場は数えることができるほどしかありませんでした。

しかし、つい先日、私は素晴らしい場に出会うことができました。
そんな話を今回はシェアさせていただきたいと思います。

選手たちの一進一退の攻防に心を動かされる

先日、昼食後に高校野球県大会決勝を見ていました。

見始めたときは、9回が終わる頃で延長戦に入っていきました。0対0の投手戦で、1つもミスが許されないような試合展開に、緊張感が画面から伝わってきて、引き込まれてしまいました。

印象的だったのは、両チームとも笑顔を絶やさないことでした。ここで打てば得点できるような勝負どころ、ここで絶対守り切らないといけないピンチ、どちらもとても緊張する場面のはずです。しかし、両チームの選手たちは、なかまで声を掛け合いながら、「笑顔でいこうぜ!」と確認し合っているように感じました。

きっと日々の活動から、そういった考え方、闘う姿勢で取り組んでおられるのだろうと感じました。

そんな中で、守備のファインプレーがぶつかり合っていました。お互いにチャンスをつくるのですが、あと1歩で得点することができるという場面でどちらのチームも誰かが守備でスーパーファインプレーを発揮して、ピンチをしのぎ合っていました。

見ていてとても気持ちがいいですし、だんだんとこちらも引き込まれて力が入っていくような試合展開でした。非常に見応えのあるプレーや試合に、心を動かされました。

このような試合展開に、ベンチも笑顔で関わっておられました。監督も控えのなかまもみんなです。相手のファインプレーでチャンスを潰されてもがっかりすることなく、「次は自分たちがやってやるぞ!」、「次は自分たちの番だ!!」と言わんばかりの雰囲気を感じました。

応援席もため息よりも、歓声の方が大きかったように感じました。各チームの応援席も選手たちのプレーに引き込まれて、一緒に闘っているような印象でした。

そして、印象深かったのが審判の方々の様子です。1つ1つのカウントの判定やアウトの判定にとても丁寧に判定をされていました。中でも1点が入るか入らないかのホームベース上でのタッチプレーには、非常に真剣かつ丁寧に状況を観察した上で、しっかりと噛み砕きながらゆっくりと落ち着いて判定を下されていました。選手たちがこれだけ全力を出し合ってぶつかり合っている試合に対して、審判団のみなさまも全力を出し切ろうとしておられる様子を感じました。

選手たちの全力に、会場全体が引っ張られ、とても素晴らしい場になっていたのではないかと、画面越しでも感じられるくらいでした。ぜひ、現地にいたかったな〜と感じました。

なぜ、この試合で心を動かされたのか?

選手たちのはつらつとしたプレーぶりに、私は心を動かされたのですが、なぜ心を動かされたのだろうか?と少し考えてみました。

最も大きな理由は、全力と全力のぶつかり合いにお互いの力がお互いに引き出されていき、試合を通じて、両チームの選手たちが成長していくような試合ぶりだったからではないかと感じました。

これが、片方のチームだけが力を発揮してある程度の差がついてしまうような試合展開だったとしたら、ここまで心がぐっと感情移入するようなことはなかったと思うのです。一方のチームが全力を発揮していいプレーをすれば、もう一方もそれをさらに越えるかのようにいいプレーを発揮する…その全力どうしのぶつかり合い、力の引き出し合いが見ていて、素晴らしかったと感じましたし、そこが1番のポイントだったと気づきました。

そして、ここからはあくまでも推測ですが、相手のスーパープレーに対して、「ナイスプレー!」と認める気持ちと、「今度は自分たちがそのプレーを越えてやる!」という挑戦の気持ちをお互いが持ちながら、試合をされていたように感じました。

どんな手段を使ってでも相手に勝つ、
相手を蹴落として、勝ち切る、

というような考え方ではなく、相手の力や頑張りを正面からしっかりと受け止めた上で、それを越えるものを自分たちが発揮するというような考え方でプレーに向かっておられるように感じました。だからこそ、全力で向かってくる相手に対して、自分たちも全力でぶつかっていけるのだと思いました。

ここに、あいてのせいやまわりのせいにしてしまうような甘さや脆さがあれば、きっと全力の相手のパフォーマンスを受け止めきれないと思います。相手を変えようとするよりも、自分たちのできることに集中して、自分に矢印を向け続けるという姿勢を日々の取り組みから、継続しておられるのかもしれません。

これらはあくまでも推測に過ぎませんが、このようなことを感じたからこそ、私も心を動かされ、自分も「応援したい!」と感じたのではないかと考えました。

日々の取り組みから「フェア」は引き出されるのではないか?

そして、上記のようなことを感じた理由が明確になるような出来事がありました。

それは勝利チームのインタビューからでした。
勝利チームの監督さんのインタビューの最初に、「まずは、相手チームのみなさんとここまでやり合ってお互い力を出し合いながら苦しみ合って素晴らしい試合ができたことを称え合いたいです」という旨のことばを伝えられたときに、なぜこんな素晴らしい試合になったのか、その答えに出会ったような気がしました。

今回の優勝チームは、昨年の県大会の決勝で本当にあと1歩のところで、甲子園出場を逃していました。その経験から、どうすれば甲子園出場を達成することができるのか?そこをチーム全体で模索しながら培ったものが、笑顔で闘い続けることであり、相手を受け止めることであり、自分たちに矢印を向けることであったのではないかと思います。

当然、勝つための野球の要素も大いにあったことと思いますが、素人の私にはそれはわかりません(汗)。それ以上に、私は、相手をしっかりと受け止めて、そこで動じることのない精神力と言いますか?メンタルコントロールと言いますか?その秘密を教えていただきたいと思いました。なぜならば、この部分は競技を越えても生かすことができることですし、自分の望む人生を歩んでいく上でも役立つからです。

野球がよくわかっていない私が、選手たちが自分に矢印を向けていると感じたのは、私自身もそれを大切にしたいと思っているからかもしれません。やってみようとすると、大人でもなかなか難しいことがわかると思います。私も若い頃は特に、「これは俺のせいじゃないでしょ…」と「何でこうやってくれないんだ…」と人のせいや周りのせいにしてしまっていました。これでは情けないし、自分を成長させることができないと気づくまでにかなり時間がかかってしまいましたが、少しずつ自分の考え方を変えてきました。

目の前で起こったことを真っ直ぐに受け止めるだけでも大変なことです。そして、その受け止めたことを自分に矢印を向けて自分を変えていくというのは非常に大変なことだと感じています。それを、高校生たちが当たり前のように発揮していたことを目の当たりにして、これは日々の取り組みから意識して取り組み続けているのではないかと感じたのです。

今回のまとめ

私は、子どもたちができるだけ自分の思うステージに進んでほしい、そしてできるだけ長くサッカーを楽しんでほしいと願っています。

そのための環境づくりの1つとして、今回の高校野球のような試合を子どもたちに経験することができないかと考えています。そのために、相手を認めて受け止める姿勢を私が示すこと、そしてそれを全力で上回っていくことを追求しています。また、うちのクラブを「受け止めて」くださるチームの存在を大切にして、格上・格下など全く関係なく最後まで全力で闘い切ることを体現しようと取り組んでいます。

しかし、なかなかねらってできることではないということを身に染みて痛感しています。しかしながら、「もっとうまくなりたい!」、「もっとサッカーを続けたい!」と試合経験を通じて、心の底から感じた子どもたちは、大きく成長したり、次のステージでも楽しんでサッカーを続けたり、大人になってもサッカーライフを楽しんだりしている姿をこれまで見てきました。

こんな環境をねらってつくることは難しいですが、1歩でも2歩でも近づくことができるようにしていきたいです。そのためには、まずは自分からです。私自身が、目の前のことをしっかりと受け止める、その上で自分に矢印を向けて自分にできることを編み出していくという姿勢を通じて、子どもたちに何か伝わるものがあればいいなと思っています。

この度の高校野球から
対戦相手は、「敵」ではなく、一緒に試合をする「なかま」であり、その「なかま」がいるからこそ、試合をすることができるということの奥深さを改めて感じる機会となりました。そして、日々ともに活動するなかまも、「ライバル」ではあるが、日々自分を高めていくなかまであるから、お互いに全力を出し合い、競い合っていく存在であることも改めて感じました。

やはり、まずは自分から全力で取り組む!!これがフェアプレーの基本なのだと改めて感じました。

最後になりますが、改めて私の心を揺り動かし、前向きな刺激を与えてくれた高校生のみなさん、それを支えるみなさまに、画面を通じてですが出会うことができたことに大変感謝しております。

この記事が少しでも何かの役に立てますことを願っております。