何年も前のことになりますが、か〜すく(スクール)で指導をしているときに、ある程度サッカーにも慣れてきて、上手になってきた子どもたちの中に、体験できてくれた低学年の子どもが入って活動することがありました。
多くの場合、ボールに向かっていく際の出足が遅かったり、反応が遅かったり、一回で動きを止めてしまったりして少し悩んでいるような姿を見かけます。これまでそんな姿を何度も見てきましたが、あまりにもそれがつづいてしまうとサッカーが楽しくなくなるかもしれないと感じていました。
「何とかいい方法はないものか?」と悩んでいました。
みなさまはこういった経験はございませんか?
今回は、この点についてお伝えしようと思います!
初めてサッカーをする子どもたちは、なぜ動き遅れるのか?
初めてサッカーをする子どもたちがミニゲームをするとき、多くの場合なかなかボールを触ることができません。これはなぜでしょうか?
それは、初めてサッカーをやっているからです!な〜んていうと、「そんなの当たり前じゃないか!」と言われてしまいそうですが、そうなんです。初めてサッカーを、ミニゲームをやっているので、おそらくどこにボールが動くのかわからないのだと思います。
わからなくても動き続ける子どもであれば、何となく感覚的にわかるようになっていくかもしれません。私の経験から考えますと、ボールがどこに動くかわからなくて、立ち止まってしまう子どもたちが結構多くいます。
もう少し掘り下げて考えてみます。
サッカーを初めてまだ日の浅い子どもたちが多い中でミニゲームをすると、おそらくボールの固まって団子のようになると思います。この場合は、子どもたちは「ボールを触りたい!」という気持ちからボールに動きに合わせようとして追いかけて走っていくと思いますので、だんだんと慣れていくのではないかと思います。
配慮が必要なのは、ある程度ボールが扱える子どもたちがいる中で、初心者の子どもたちが一緒にプレーする場合だと思います。ボール扱いが思い通りにできるようになってくると、ドリブルのスピードが上がったり、パスが出せるようになったりします。すると、かなりボールの動きが速くなり、目まぐるしく展開が速まります。そのため、初心者の子どもたちがボールの動きについていって、ボールを触るには、かなり難易度が上がってしまうということが考えられます。
やはり、「サッカーがやりたい!」と思って始めた子どもたちですから、ボールを触りたいはずです。そういう姿を見てきて、何とかできるだけ早く慣れるような方法はないものかと考えるようになりました。
初心者の子どもたちの運動経験から考えてみましょう!
例えば、小学2年生くらいの子どもで初めてサッカーをするということを想定してみます。
これまでたくさんの外遊びを経験してきた子どもであれば、おそらくよく走り、よく動けると思います。しかし、現在子どもたちを取り巻く環境は、3つの「間」が減少していると言われています。子どもたちが思い通りに伸び伸びと遊ぶことのできる「空間」の減少、塾や習い事などで遊ぶ「時間」が減少、そして、これらが原因で一緒に遊ぶ「仲間」が減少しています。つまり、外遊びから得る運動経験が十分でない子どもたちがたくさんいると考えられます。
つまり、走ることや動くことがまだ得意ではない子どもたちへの配慮や成長を考えて活動していかないと、サッカー楽しめないかもしれないということです。
これまでの指導経験で運動は得意ではないけれど、
よく考えて行動している、
なかまのために声を出してくれる、
なかまのいいところをすぐまねる、
よく気づく、
そんな子どもたちをたくさん見てきました。
運動が苦手でもそういったよいところをサッカーに生かす場面をつくることができれば、きっとその子どもたちもサッカーがより楽しくなります。楽しくなって続けていけば、少しずつ運動もできるようになっていきます。
サッカーの要素から考えてみましょう!
初めてサッカーをするという子どもたちにとって、最初に打ち当たる「壁」は大きく2つではないかと考えています。
1つは足でボールを扱うという難しさです。
サッカーをしたことがある方ならば、「わかる!」と感じられると思います。普段の生活で、足はどんなときに使いますか?立ち上がるとき、立つ、歩く、走るなどが中心だと思います。それなのに、サッカーをやるとなったとたん、いきなり足を複雑に使わなければなりません。よく考えればわかりますが、すぐには足でボールを扱うことができるようにはならないということは当たり前のことなのです。
ボールが扱えないことを子どもたちがあまり悩まないように、できないことや失敗することをこわがらずに思い切ってプレーできるような雰囲気づくりや声かけ、環境づくりが必要かもしれません。「たくさんボールにさわりたい!」、「もっとやってみたい!」、そんな活動がたくさんできることが理想だと思います。
もう1つは、アクション行動、つまり自分から動くこと、予測して動くことが必要になるということです。ある程度、ボールが扱えるようになると、ボールの動きが速くなってゲーム展開も速くなるということをお伝えしました。そんな中で、ボールに触ろうと思うと、どうしてもボールの動きについていくだけでは遅れてしまって触ることが難しくなります。つまり、リアクション行動だけでは難しくなるということです。運動能力が高ければ、リアクション行動でもボールに触れるかもしれません。もし、運動が得意でなければそれは難しく、アクション行動が必要となります。
しかし、普段の生活を考えてみると、アクション行動の場面って結構少ないと感じませんか?
これは私の失敗談なのですが、以前の私が活動でやっていたことは、リアクション行動ばかりだったのです。笛を鳴らしてから行動するような活動、私の合図に合わせて行動するような活動…リアクションばかりだったのです。子どもたちが楽しんで活動していましたし、気にすることもありませんでした。今となっては情けない限りです(汗)。大先輩に指摘されて初めて気づくことができました。小さい頃からリアクション行動ばかりしていたら、リアクションしかできなくなってしまいますね。本当に恥ずかしい大失敗です。
かけっこで、「よ〜い、どん!!」でスタートしますよね?でも、サッカーでは、そんな場面はほとんどないのです(PKやセットプレーくらいでしょうか?)。サッカーの場面で、「よ〜い、どん!!」は自分で見つける、自分で決めないといけないのです。
「それができるようになるにはどうしたらいいのだろうか?」これまで、いろいろと失敗も積み重ねながら、見つけたことをお伝えします。
設定やルールの工夫
子どもたちに向けて、「自分で考えて行動しよう!自分で決めよう!」と伝えることは悪いことでないと思います。しかし、それではなかなかできるようになりませんよね?やはり、やりながら気づき、やりながら学び、やりながらできるようになっていくことが1番の近道ではないでしょうか?
では、どうすればアクション行動を増やしていけるのでしょうか?
例えば、3対3でミニゲームを行うとします。
ゴールをつけて行う、どこでも行われているような状況設定です。1分間、3分間と時間設定をすることもあるし、ボールが出たら交代という設定にすることもあると思います。ごくごく普通のミニゲームですよね。
子どもたちがミニゲームに熱中しているときに、もう1つボールを入れてみたらどうなるでしょうか?(子どもたちにはボールが追加で加わることは説明していません)
きっといろいろな反応があると思います(笑)。
こういう「仕掛け」に対して、子どもたちがどう反応してくれるのかが個人的にとても楽しみにしています。とそれはさておき…場合によっては気づかずにそのままミニゲームに熱中しているかもしれません。また、最初のボールでプレーするのをやめて、次のボールに全員が移るかもしれません。それに対するリアクションは本当に楽しんでもらえたら大丈夫です。
そして、何も説明せず、次の子どもたちも同じようにゲームをスタートさせます。そして、またさっきと同じようにもう1つボールを入れてみてください。すると、子どもたちのアクションが変わってくるはずです。それで、コーチが2球目を出すのを見ながら準備している子どもには「〇〇くん、いい準備だね!」と認める声かけを、また順番を待っているなかまから「もう1つボールがでたぞ〜!」と声が出てきたら、その子どもに「〇〇さん、よ〜く気がついたね!」とまた認める声かけをしていく…とだんだんと受け身の姿勢から、情報を自分からキャッチしにいこうというアクション行動が出てくると思います。
こんな感じで、「どうすれば得するのか?」、「どうすれば勝てる確率を上げることができるか?」という視点を少しずつ子どもたちに感じ取る、考える機会をつくっていくと、段々をリアクション行動からアクション行動に変えていけるのではないかと思います。
もう1つこういった方法がいいなと感じるのは、単に足が速いだけ、ボール扱いがうまいだけでは、活躍できない場面ができることです。逆に言うと、足が遅くても、ボールが扱えなくても、気づく力が高い子どもは活躍できるかもしれないということです。こちらの伝え方や関わり方次第にはなりますが、こうした活動を行なっていくと、子どもたちがお互いに真似しあったり、学び合ったり、協力したり、みんなで少しずつ成長できるのではないかと考えています。
まとめ
楽しそうだからやってみたいと感じる、やってみて楽しいから続ける、そしてやり続けているとできることが少しずつ増えていくからさらに楽しくなる、だからもっと続けたいと感じる…という循環(サイクル)が非常に重要だと感じています。
これは、クラブとしてとても大切にしていることを言語化したものです。私の師匠が指導している背中をずっと近くで見てきて、ずっと真似てきて、自分の中に落とし込むことができたことです。当時はそんなことまで頭がついていっていませんでしたが、こんな大切なことを伝えてもらえたことに感謝しかありません。
身を以て経験してきたことがこうしてことばにできたので、私の中で大切にしておきたいという思いもありましたが、やはり私はたくさんの指導者の方々や子どもたちのために役に立ちたいという気持ちがありますので、包み隠さずお伝えしたいなと思っています。
私はおもしろい人間ではないので(汗)、場を盛り上げるのが正直苦手でした。それがずっと自分のコンプレックスでした。しかし、いろいろと子どもたちから学んでいくうちに、今回の記事のように活動の場づくりで、設定の工夫で、子どもたちを楽しませることができることに気づかせてもらいました。そのおかげで、私自身も指導を楽しめるようになりました。私と同じような悩みを抱えておられる方のお役に立てればと思っております。
わかりにくい文章だったと思いますが、最後まで読んでいただきましてありがとうございました。