確か3年生か4年生の頃からだったと思います。
「お父さん、マラソン大会でもっと上の順位をとるにはどうしたらいいの?」と何気ない気持ちで聞いてきたことがありました。私は直感的に「これはチャンス!」と感じました。
当時、学校生活や家庭での生活で、なかなか我慢の聞かない状況をたくさん目にしていました。やるべきことをやらずに、好きなことばかりしている様子や自分のやりたくないことは後回しにして結局やらない様子、楽しい方や楽な方に簡単に流されてしまう様子など、自分の気持ちをコントロールする力がとても低いと感じ、親としてどうすればいいか悩んでいました。
そんなときに…です!!
「これはいいきっかけかもしれない」と感じて、息子とランニングをすることにしました。
今回は、息子と取り組んだことから気づいたことや学んだことをみなさまとシェアさせていただきたいと思います。
息子に対する困りごとから
私は息子に対して、本人が将来幸せに暮らせるように、日々楽しんで暮らせるようにと望んでいます。プロサッカー選手になってほしいとか、いい大学に行ってほしいとか、人よりも何か秀でたものを育てたいとか、高い望みのようなものを息子に手に入れてほしいという気持ちはほとんどありません。
それは、私には私の人生があって、息子には息子の人生があると区別しているから、そう考えるのかもしれません。
しかしながら、自分がやりたいことしかしない状況、自分がやりたくないことを後回しにする状況、苦手なことには全く挑戦しない姿を見て、とても気がかりでした。これをそのまま放っておくと、好きなことしかしないような、自分の心をコントロールできない子どもになってしまうのではないかと感じました。
この原因は何となくですが、わかっていました。
それは、自信のなさにあると考えていました。息子の様子を見ていると、「結果」ばかりに目がいっていました。100点をとったことや自分ができたことは、自分からどんどん伝えてくれます。しかし、できなかったことは隠しています。私の関わり方にも問題があったのかもしれません。
親として息子に気付いてほしかったのは、少しのことでもコツコツとずっと続けていくことで「できる」に近づいていくということでした。たとえ「できない」にしても、「できる」を目指して続けていくことはすごいことだし、大切なことだということを身を以て経験してほしいと願っていました。
息子には、一度もサッカーをやれと言ったことはありませんでしたし、サッカーをやるように仕向けもしませんでした。しかし、息子が自分から「サッカーがやりたい!」と言い、それを許したのは、サッカーをやることでその経験ができると考えたからでした。逆にいうと、私が親として願っている経験は、自分が好きなことでしかなかなか経験できないことであることも自分の経験からわかっていました。
サッカーを通じて、少しずつ息子の姿が変わってきました。
初対面の人とは、目も合わすことができず、親の影に隠れていたあの姿もなくなり、あいさつが自然にできるようになりました。サッカーをするために、宿題を早く終わらせることもできるようになりました。少しですが、決められた家の仕事(お手伝い)もできるようになりました。
しかし、自分の意志や心のコントロールは難しそうでした。そんな中で、やはりサッカーの中で育つきっかけをつくった方がいいと考えて、リフティングの取り組みをさせてみることに決めました。
あまりうまくいかなかったリフティングへの取り組み
2年生の終わりから3年生にかけて、練習前にリフティングをやるよう話しました。
しかし、苦手で数が全く増やせず、いつもさぼっていました。
「来週は○回を越えよう!」と私が目標を決めて、練習する機会を無理やりつくりました。これがとてもよくありませんでした。自分からやると約束していないので、続きません(汗)。
自分が言うのもなんですが、やはり「集団の力」、「なかまの存在」は大きいなと思います。クラブの活動で競争すれば、きっといい刺激を受けて、やる気が出てくると思います。
しかし、5回もリフティングができず、そうも言っていられない状況でしたので、目標の数を達成するところを私自身の目で見届けることにしました。すると、真剣さが高まり、自分で取り組むようになってきました。そして、だんだんと練習するたびに数も増えていくので、やる気が高まってきました。
今思えば、私に見てほしかった、一緒にやりたかったのだと思います。自分が取り組んでいる姿、がんばっている姿を共有、共感してほしかったのだと思います。もう少し息子の気持ちに寄り添ってやればよかったと反省しています。
こんな取り組みを続けていき、100回を連続でリフティングできるようになりました。私なりに100回が一区切りかなと考えておりましたので、それ以降は自主性に任せました。息子は「200回いくぞ〜!」と意気込み、取り組みを続けてしました。
これは、「うまくいったのではないか?」と私は考えました。
きっかけは、マラソン大会でもっといい順位をとりたい!!から
しかし、そうではありませんでした。
できるようになりたい、「できる」に近づけたい、のであれば、コツコツ練習すればいいということは、息子なりに気づいたようでした。しかし、親として1番身につけてほしい自分の心をコントロールする力を高めることには、あまり成果を感じませんでした。
そのとき感じたことは、息子が経験したことは1つの経験に過ぎないということであり、たくさんの経験を積まないと自分を変えるきっかけにはならないということでした。そして、息子の成長について親として責任を持たないといけないが、自分と妻だけでは本当の意味で育てるには足りないということに気づきました。いろいろな人に関わってもらい、いろいろな経験から学び、成長のきっかけをつくることが子どもたちにとって大切なことだということを身を以て感じました。だから、もっと他人に頼った方がよいと思うようになりました。
少しずつ親としての肩の荷が下ろせ始めた頃だったでしょうか。
息子から「マラソン大会でもっと上の順位をとるにはどうしたらいいの?」と聞かれました。練習あるのみと自分でもわかっていたと思いますが、どうやって練習をしたらいいかわからなかったようでした。
マラソンが速くなるには、ペース走をしたり、タイムをはかったり、何か方法があるのでしょうが、素人の私にはわかりませんでした。それに、リフティングでの失敗で、一緒に続ける方が息子にとって続けて取り組むことができることも頭にありました。
そこで、かなりゆっくりのペースで長い距離を走ることを提案しました。そうでないと私もつきあえません(笑)。専門的には、ロング・スロー・ディスタンス(LSD)トレーニングというそうですが、これが私にも息子にもあっていると考えました。
いつの間にか、息子から進んでやるようになった
始めは、1キロを9〜10分くらいのペースで行いました。マラソン大会が当時1.5キロだったので、まずは1.5キロから始めて、2キロ、3キロとゆっくりと増やしていきました。
私は、肉離れを経験して再発を恐れていたので、ウォーキングで行っていました(苦笑)。
3キロも余裕になってきた頃だったでしょうか?
「お父さん、今度はいつ走れるの?」と自分から聞いてくるようになりました。私が時間があるときに走るという状況でした。私は、とても驚きました。走ることは息子にとって、得意なことではなかったからです。どちらかというと嫌なこと、苦手なことだったと思います。それが自分からやると意志表示してきたことには驚きました。
これは、走るという積み重ねがサッカーにも生きるということを実感したからだと感じています。
あるとき、サッカーの練習から帰る車の中で、「最近、楽に走れるようになってきた〜!」とぼそっと言ってきたことがありました。「やっぱり、続けていくといいことがあるな〜」と話しましたが、息子なりに自分が取り組んでいることがサッカーにも生きるということに気づいたのを感じました。
それから、このLSDトレーニングは私たち親子の夏場の恒例行事になりつつあります。
夏休み期間の息子との取り組みについてのまとめ
後から学んだことですが、心と体はとても密接につながっているそうです。
走っていると、体が疲れてくると心もだんだんつらくなってきます。つらいからといって、足を止めればストップしてしまいます。そこで、体が疲れてきたけど、もう少しがんばろうと心に決め、足を止めずに動かすことでゴールまで走り切ることができます。
息子は自分なりにそれを経験して、走るという経験を通じて、心を整える経験をしていたのだと思います。それが少しずつですが、他の場面で生き始めています。例えば、今年の夏も厳しい暑さでしたが、へこたれることもなく、サッカーを楽しんでいました。自分からサッカーの試合や番組を録画して見るようになってました。
こうして、いろいろな経験を通じて、気づき、成長し続けてほしいと親として願っています。
そして、私自身もこの経験を通じて、息子に成長させてもらいました。子どもをコントロールしようとしてもだめだということを身を以て教えてもらいました。親にとって、子どもは大切な存在ですが、子どもを親の思い通りにするのは違いますし、そもそも親の思い通りにはなりません。
まさに「子どもは親の鏡」であると感じています。
子どものことをどうにかする前に、自分自身の姿をしっかりと見つめることが必要である、そして自分の姿を変えていこうとすることで、子どもも気づく日がくるかもしれない…それくらいに思っていた方がよいかもしれないと学びました。
近い将来、思春期がやってきて、また親としての成長を試される日がやってくると思います。
その日まで、子育てを楽しみながらも、子どもと一緒に成長していけるよう、過ごせたらいいなと思っています。
私ごとであまり参考にならないかもしれませんが、この記事が誰かの役に立てればいいなと願っております。最後まで読んでくださり、ありがとうございました!