先日、ある指導者の方から「うちの子どもたちはキックが蹴れないんです〜」という話をお聞きしました。
いろいろお話してみると、「何とかしたい!」という気持ちがひしひしと伝わってきました。その一方で、どう指導したらいいかわからないという困っておられる様子も感じました。
みなさまはいかがでしょうか?
他にも同じような悩みを持っておられる指導者の方がおられるのではないかと思い、今日はキックについてシェアさせていただければと思います。
自分がキックをどう学んだか?
私は小学3年生からサッカーを始めました。自分はどんなふうにキックを学んで行ったのか…記憶がある範囲で思い出してみたいと思います。
小学生のときの練習の中でどうキックを練習してきたか?
2人組で向かい合って対面パスをしていました。近い距離でインサイドキック、少し離れてインステップキックを蹴っていました。インサイドがなかなか蹴れるようにならなかったですね。監督が手本を見せてくださったり、私の足を持ちながら「こうして動かすんだよ!」と丁寧に指導してくださったことを覚えています。
インサイドのやり方は教えてもらったのを覚えているのですが、あとのキックはあまり教えてもらっていないようです。私のチームでは、ポストシュート(味方にパスして落としてもらってシュート)、ダイレクトシュート(ポストから転がしてもらってダイレクトシュート)、センタリングシュート(クロスからシュート)とかなりキックを蹴る場面が多かったと記憶しています。
監督は仕事の都合で、土日の活動だけ指導してくださいましたので、平日は子どもだけでの練習でした。今思うと、たくさんキックを蹴るうちに少しずつ蹴れるようになったのだと思います。
いろいろなキックの蹴り方を身につけていった中学時代、高校時代
中学生になって、インステップを寝かせて蹴るキックやチップキック(浮かせてバックスピンをかけるキック)を顧問の先生から教えていただきました。「へぇ〜!そんな蹴り方があるんだな〜」と驚きました。
なんでそうなったかは覚えていないですが、アウトフロントぎみでスピンをかけるキックを練習して蹴れるようになりました。
高校生になると、毎回の練習のアップの中に、インステップのように足を棒にしてアウトサイドぎみで前方に蹴るキックを必ず蹴っていました。どんな意味があったのかは覚えていないですが、とにかく毎回毎回やりますので、みんなが当たり前にこのキックが蹴れるようになっていました。
また、サイドではインカーブでぎりぎりタッチラインを破らないようなキックを要求されていましたので、なかまと一緒にこのキックをたくさん練習していたことを覚えています。これを相手にやられると、結構めんどうなんですよね?(笑)
指導者になって気づいた「財産」
指導者になって、子どもたちにどうやってキックを身につけさせたらよいのか、よくわかりませんでした。どう指導したら、子どもたちがうまく蹴れるようになるかはなかなかわかりませんでした。
しかし、自分が知っているキックを伝えることはできるので、当初はキックの種類を増やすように指導していたと思います。後になって気づいたことですが、私は選手時代にいろいろなキックの蹴り方を伝えていただいたことがすごい「財産」だったことに気がつきました。だから、現在でも子どもたちが様々な蹴り方ができるようになることを
意識して指導を続けています。
指導の経験を積みながら、キックについて悩んでいたのは、初心者の子どもたちにキックをどう指導していくか?ということでした。
初心者にはインサイドキックは難しすぎる!
「キックの基本はインサイド、インサイドが最も正確に蹴れるから、早く身につけた方がいい!!」と思い込んでいました。それを全く疑うことなく、子どもたちに指導していました。しかし、インサイドキックはなかなかできるようになりませんでした。
インサイドキックは股関節を開いた(外旋した)上で、膝関節を曲げながら横方向へ動かします。蹴り足をゴルフのパターのように動かします。これを片足立ちでパランスを保ったまま、やらなければなりません。サッカーを始めたばかりの子どもたちがこんな難しい動きをやるのは、困難なのです。
当時、このことに気づかずに指導をしていたかと思うと、子どもたちには本当に悪かったと思っています。
キックの指導が難しい理由について改めて考えてみると…
キックを獲得するために必要なことは、
①片足で立つ(片足立ちでバランスを保つ)こと
②足首の固定
③上半身と下半身の連動
だと整理しています。
厳密にはこれ以外にもいろいろな要素があるかと思いますが、シンプルに考えるとこの3つではないかと考えています。
では、この3つを意識して蹴れば、すぐにできるようになるかというと全く違います。
例えば、①片足で立つですが、キック動作では助走から立ち足を踏み込み、片足てバランスを取りながら、蹴り足を動かさないといけません。かなり高度なバランスが必要です。様々な運動経験からこの動作が身についていればすぐにできるのでしょうが、初心者にとってはかなり難易度が高いです。
②足首の固定については、さらに難易度が上がります。親指を上げて足首を固める方法と爪先を伸ばして足首を固める方法の2つがあります。これらもいきなりできることではありません。何度も何度も積み重ねながら、自分で感覚をつかみ、身につけていくことでようやくできるようになることです。
私が子どもの頃、自分のボールをボールネットに入れて練習に通っていました。その道中で、ボールをバシバシと蹴りながら通っていました。みなさまも経験があるのではないでしょうか?あの経験によって、足首の固定の感覚がついていったように思います。
また、初心者がリフティングをするのが難しいのは、この①と②が同時に要求されるからです。逆に言うと、リフティングで遊びながら①と②を身につけていくことによって、より早くキックが獲得できるきっかけになるかもしれません。
③上半身と下半身の連動によって、助走や動作から生み出したパワーをいかにボールにうまく伝えるかが変わってきます。ここでお伝えするには大きすぎるテーマなので省略しますが、これも簡単にできるようになることではありません。
つまり、キックができるようになるには、時間がたくさんかかるということです。それなのに、私はいきなりキックを蹴らせようとしていました。それはできるはずがありません。
現在では、片足で立つワークとして、ケンケンでおにごっこしたり、ケンケンで対面パスをしたりしています。また、足首を固定するワークとして、パントキックでボールを真上に蹴り上げる遊びをしたり、パントキックでゴールのクロスバーに当てるゲームをしたりしています。これらのワークを毎回の練習の中でウォーミングアップやいろいろなところに盛り込んで、少しずつキックが蹴れるようになる「下準備」をしていきます。
こうした方がよりスムースにできるに近づいていくように感じています。
先輩方から学んだ「適切な指導の順番がある」ということ
これまで指導者として活動していく中で、たくさんの先輩方に教えていただきました。その中で大切にしていることの中に、このことばがあります。
「指導には、適切な指導の順番がある」
このアドバイスが私の中で落とし込めてから、やっとキックのこともいろいろと経験を積みながら整理することができてきたように記憶しています。
例えば、ボールを自分の思うように扱えないのに、周りの状況を見ながらプレーすることは難しいですよね?だから、ボールを思い通りに扱えるように練習しないといけない。
それと同じように、キックにも子どもたちが学びやすい順番、獲得しやすい順番があるのではないでしょうか?
初心者には、トーキックから指導する!?
あるとき、
「外国では、初心者に対してトーキックやインステップキックから指導していく」
という知識を得ました。
人間の自然な動きに近い動作から獲得していき、だんだんと難易度の高いものに移していくのです。これを聞いて、「なるほど〜!!」と思いました。よく考えれば当たり前のことなのですが、まだまだ子どもたちの目線から考えることができていなかったのだと思います。
インステップができるようになってきたら、インフロントキックやアウトフロントキックに移行していく。そして、それもできるようになってきたら、そこでようやくインサイドキック、アウトサイドキックを指導するのです。
インサイドキックはたくさん複雑な要素がある技術であるため、子どもたちにとって、初心者にとって、非常に獲得が難しい技術なのです。
キックについてのまとめ
先日のキッズスクールで、「トーキックで蹴ってみよう!」とキック遊びをしました。参加してくれた子どもたちは小学1年生でこの5月からサッカーを本格的に始めた子どもたちでした。「トーキック」がうまく蹴れる子もいましたが、まだ難しい子もいました。やはり、足首を固める感覚が難しいのだと思います。
「じゃあ、トーキックの前は何をやればいいのだろうか?」と考えました。私が考えついたのは、「足の裏でボールを押し出して転がす」ことです。
この動作によって、膝を前後に動かす感覚や足首を固めるために親指を上げる感覚がわかってくるのではないかと思います。
しかし、それでもできなければさらに考えようと思います。こうして、「子どもたちのできないことを見つけたときに、いかにこちらがさらに階段を降りて、子どもたちに伝えることができるか?」が指導者にとって、とても重要であることを私の師匠が背中で伝えてくださっていたことを思い出します。
長文になってしまいましたが、最後まで読んでいただきましてありがとうございました。この情報が指導に困っておられたり、悩んでおられる方のために少しでも役立つことを願っております。
ここに書かせていただいた内容は、これからもより整理して書き換えていくことになると思っております。それこそが、経験から子どもたちから学ぶということであるからです。もし、みなさまの方が整理できていることがあれば、私にも教えてください!!