2022年、今年の夏の甲子園で全国優勝を成し遂げた仙台育英高校野球部監督の須江航さんの優勝インタビューは、みなさまの記憶にも残っているのではないでしょうか?

「…青春って、すごく密なので…」

2022年流行語大賞にノミネートされ、選考委員特別賞を受賞されたことばです。メディアにもすごく取り上げられて、そこだけが切り抜かれる印象を強く感じましたが、私個人としては須江さんの考え方から学ぶことがたくさんありました。

今回は、須江さんの夏の甲子園優勝インタビューから私自身が感じたことをシェアさせていただきたいと思います。




須江さんの優勝インタビュー(動画)のリンク

須江さんの優勝インタビュー(文字)のリンク


人間の成長を意識しているからこそ、人に意識が向く

「初優勝おめでとうございます。」というインタビュアーのことばに対して、「ありがとうございます」ではなく、「宮城のみなさん、東北のみなさん、おめでとうございます!」と須江さんはコメントされました。

東北勢の甲子園初優勝とはいえ、これはなかなか即座に言えることではないと感じました。常日頃から、このコメントを言えるような考え方のもとで行動し続けておられるのではないかと推測しました。

宮城県内での切磋琢磨、東北での切磋琢磨のおかげ、つまりは宮城県、東北地方のたくさんのチームのおかげで自分たちが成長させてもらっているということを日々意識しているチームであるから、こうしたコメントがこの場で発せられたのだと感じました。

また、野球のことに止まらず、

「入学どころか、たぶんおそらく中学校の卒業式もちゃんとできなくて。高校生活っていうのは、僕たち大人が過ごしてきた高校生活とは全く違うんです。青春って、すごく密なので。でもそういうことは全部ダメだ、ダメだと言われて。活動してても、どこかでストップがかかって、どこかでいつも止まってしまうような苦しい中で。でも本当にあきらめないでやってくれたこと、でもそれをさせてくれたのは僕たちだけじゃなくて、全国の高校生のみんなが本当にやってくれて。」

というコメントを残されました。

須江さんが、高校生と関わる指導者として、1人の人間として、全国の高校生の気持ちを推し量って自分ごとのように感じたことをことばにされているのを聞いて、私自身すごく心が動きました。

なぜこんなにも心を動かされたのか?それは、自分も改めて高校生たちの立場に立って想像してみたときに、心の痛みや苦労を改めて痛感したからではないかと思います。私も日々小学生や中学生と関わる中で、子どもたちの様子から感じることがたくさんありました。そこでの共感も影響を受けているのだと思います。

全国優勝という「成果」だけを追って、日々行動しているのであれば、おそらく全国の高校生1人1人のことにまで、到底意識が及ばないのではないかと感じました。人間として成長し続けることが目的であり、子どもたち1人1人の小さな変化を感じながら行動しているからこそ、感じることではないかと思いました。

チームとして全国優勝を目指しながらも、個々の成長も目指していた…だから、地域や他チームとのつながり、全国の高校生1人1人の心情にまで、配慮が及ぶのではないかと感じました。

自分(たち)さえよければいいではなくて、「周りも一緒に!!」という考え方、心のありよう、生き方に大きな刺激を受けましたし、改めて気づきと学びを得ることができました。


目的が成長することだからこそ、相手の存在を大切にできる

「例えば、今日の下関国際さんもそうですけど、大阪桐蔭さんとか、そういう目標になるチームがあったから、どんなときでも、あきらめないで暗い中でも走っていけたので。本当に、すべての高校生の努力のたまものが、ただただ最後、僕たちがここに立ったというだけなので、ぜひ全国の高校生に拍手してもらえたらなと思います。」

とコメントしておられました。

ここは、私自身も日々痛感していることでしたので、ものすごく共感できました。

やはり、自分のクラブだけの力では、自分たちの力を引き出すことができないんです。やはり、他チームと試合をさせてもらったり、交流させてもらったりしないと、自分たちの力以上のものは引き出せないのです。現在地を越えていくようなきっかけや限界を広げていくような成長は、やはり相手の力を借りないとなかなか達成できないとこれまでの経験から痛感しています。

そういった意味で、目標となるチームの存在はとても重要だと感じています。だからこそ、相手チームの存在を大切にして、相手チームの「おかげ」を忘れることなく取り組み続けておられるのではないかと感じています。

これが目的が「勝つこと」だけになると、だんだんとズレていってしまうと思うのです。相手に勝つことにとらわれ過ぎて、だんだんと「過程」に目がいかなくなっていき、「結果」に終始してしまうようになってしまうのではないかと。勝てなくなっていくと、勝つために自分自身を、個人個人を成長させるということがだんだんと見失われ、「勝てていない」という目の前の結果に目を奪われてしまうのではないかと。

その結果、自分たちの内面から目を背けてしまい、なかまどうしで蹴落としあったり、相手チームに攻撃的になったりと、原因を外に求めるようになってしまうように思います。ここで重要となるのは、やはり個々の成長であり、心の成長だと思います。相手の「おかげ」、相手と一緒に切磋琢磨していくという視点を持つことによって、勝ち負け、チームや個人個人の成長の両面に意識が向き、たとえ試合に負けてしまったとしても残るものがあります。そこから、敗戦の意味や原因を感じ取り、分析して次に生かす行動をとることによって、次の勝負のチャンスや次の成長のチャンスに生きる経験になると考えます。

そんな取り組みを私が思っている以上の高いレベルで積み重ねてこられたことを、須江さんのことばから、また選手たちの様子から感じ取りました。あそこまではまねることはできないですが、少しでも自分たちのクラブに、自分の行動に取り入れていきたいと刺激を受けました。


子どもたちの成長のために大人ができること!?①のまとめ

チームが何のために存在し、何を目指して活動していくのか?

うちのクラブもこれについては、絶えず考え続けています。「こうすればいい!!」というような魔法のことば、1つの答えはないと私は考えています。日々の活動を通じて、いろいろな経験を積み重ねながら絶えず磨き続けていくものだと考えています。仙台育英の須江さんや選手たち、また他のチーム、また他の分野…いろいろな情報と出会いながら、いろいろな人や経験と出会いながら、少しずつ自分たちがよいと感じる選択をとりながら、時間をかけて変え続けていくことが重要だと思います。

当然、その中でしっかりとした軸として変えないものも大切だと思います。私たちで言うと、「やる気」をキーワードにして活動することです。子どもたちの「やる気」を大切にしながら、その「やる気」を大人がサポートしていくことです。そのためには、大人も子どもたちと共に学び続けなければ、達成に近づけることができません。

そう考えますと、私たち大人が子どもたちのためにできることは、何でしょうか?

私は、大人が子どもたちと一緒に学び続けることだと考えます。大人が学び続ければ、その背中を子どもたちが見ていますから、子どもたちもそれをまねると思います。そして、大人も子どもも学び続けるために必要なことは、仙台育英野球部が見せてくれたことだと思います。

それは、「相手のおかげで自分がある」こと、「相手チームのおかげで自分たちがある」ことを実体験から気づき、学ぶことだと思います。これまでの自分を思い返してみますと、今の自分があるのは私と出会ってくださった方々、私と関わってくださった方々のおかげに尽きます。

「相手のおかげ」に気づけると、「相手からの恩」を感じることができると、自分の素直さが磨かれて、自分の目の前で起こることをしっかりと受け止めることができる、前向きに受け止めることができると感じています。

次回は、先日12月4日(日)に仙台育英野球部監督の須江航さんが「情熱大陸」で特集されていましたので、そこからの気づきや学びについて、みなさまとシェアさせていただけたらと思います。

次回の記事にむけて、物事の背景の整理や自分の記憶にしっかりと刻むために、今回の記事を書かせていただきました。ここで考えたことや感じたことを自分への戒めにしながら、さらによりよい環境づくりをしていきたいと思います。

この記事が誰かの役に立てますことを願っております。